(ここに掲げた写真は、東京都世田谷区二子玉川東再開発事業の周辺地域の風景) |
●再開発地区中心の都市計画の周辺への影響
いかに、都市計画が東急に開発の利益をもたらしているかが分かる。一方この都市計画を周辺地区から見ると何が問題なのか。 具体的事例が再開発事業に伴って、事業化が急浮上した都市計画道路の整備だ。特に、環状八号線と再開発地区とを結ぶ補助四九号線、駒沢通りが問題である。写真はその現状道路の様子を写したもの。環状八号線の方向から、再開発地区に向かって国分寺崖線を下る道だ。左の方にカーブを描きながら二車線の道路の歩道には豊かに茂った樹木が並び、沿道は緑豊かな住宅が立ち並んでいる。長年かけて、形成されてきた街並み景観である。この道路を新しく、車道九mと両側三・五m、合計幅員一六mの道路として整備する。
完成すれば、環状八号線と再開発地区を結ぶ幹線道路として機能する。ましてや、都市計画事業として土地収用の対象になり、道路周辺の土地利用も変化する。
この地域は、一般の用地地域指定に加えて風致地区の指定がされ「都市の風致を維持するために」東京都風致地区条例に基づいて厳しい土地利用規制がかかっている。いわば、住民が都市計画の土地利用規制を受け入れ、独特な地域環境を形成維持してきた。
なのに、なぜ再開発地区のための都市計画(道路整備)をこの地域が受忍しなければならないのか。「公共」の計画理念が問われる問題である。
●都市計画における「公共」の責任
「都市の土地利用を公共が介入して都市計画の下におく」というのが都市計画の基本理念だ(都市計画法第二条)。土地利用の可能性、開発の可能性は、企業であれ、個人であれ、個々の土地所有に存在するのではなく、社会的なものだ。再開発地区での土地利用規制、インフラ整備等、都市計画の「特別な扱い」は、社会的公平性を欠いているといわざるを得ない。都や区の責任は、東急の開発の利益に「公共介入」することこそ必要なはずだ。特に、「風致地区」として厳しく土地利用規制されている周辺地域との対比では、明らかに公共が都市計画の社会的責任を果たしているとは言えない。
(「区画・再開発通信」2012年4月号、波多野憲男氏論考から抜粋)
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